私はケチである

ケチ子おばさんの雑談・独り言(^^)

原液カルピス

久しぶりにそのお客様宅に伺った。

そのお宅では毎回カルピスを出してもてなしてくれる。

お昼を食ベれず仕事をしていたその日に頂いたカルピスの甘さは、私の空腹を癒し、ご夫婦の人柄の良さにホッとするひと時になった。

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夏真っ盛りの暑い毎日が続いていた頃、私は初めてそのお客様宅に伺った。そのお客様は80代のご夫婦で住まわれている。

何時ものようにカルピスを出してくれた。実は、甘いものが苦手。カルピスは何とか飲めるかなぁと思いながらストローを口に運んで一口頂く。「甘い!!Σ(・ω・ノ)ノ!」私の味覚がおかしくなったのと一瞬頭の中に不安がよぎる甘さに驚きを隠せない。しかし、お客様の前。顔に出してはいけない。あまりのカルピスの甘さと濃さにむせそうになりながらなんとか飲み込む。思いがけない事に少し動揺する。しかし、今、私の選択肢は一つしかない。そう、美味しくすべてを頂くことのみ。

グラスには氷が数個浮かんでいる。ストローでグラスの中をかき混ぜるふりをして、頭の中では「氷よ早く溶けて」と氷にお願いをするが、氷にとっては迷惑な話である。私が願ったところで氷が早く溶ける訳がない。

溶けない氷と一口だけ減ったほぼ原液と思うカルピスを眺める。ふと、色が黄色であることに気付いた。そうだ、カルピスにはいろいろな味がある。これは何味かな。味を確認する為に意を決して、むせないように気を付けながら、もう一口飲む。しかし、甘すぎて何味かわからない。私の味覚は甘さに完敗した。黄色い事で何味かを話題にして、氷が少しでも解けるように時間稼ぎをしようと考えたが、かえって「これは何味ですか?」と聞くのも失礼な話だと思い直す。その場を何とかできないかと考えながらストローでグラスの中をかき混ぜ続ける。

 

おばさんである私にとってはカルピスは高級品だった。お中元で届いた箱。ずっしりとしていれば心が弾んだ。当時のカルピスは瓶入りだったためとても重かった。子供ながらに少し揺らしてみる。チャポチャポ音がすれば液体と解り、カルピスに一歩近づき期待が膨らんだ。包装紙を透けて見る。水玉であればカルピスでほぼ間違いない。

蓋を開けてカルピスだった時の喜びはひとしおだった。5本入りだと黄色いカルピスが入っていたことを思い出す。しかし、何故だか何味か覚えていない。多分オレンジ?当時のジュースはオレンジかグレープ味しかなかった。夏の楽しみであったカルピス。贅沢に飲めるほどの量は無かったので、薄くしてたくさん飲むという子供ながらの選択をした。私にとって、濃いカルピスなんて贅沢すぎる飲み物である。数十年後の今のようにジュースが身近では無かったおばさんの子供の頃の思い出。

 

そんなことを思い出していると、このお宅のご夫婦は共に80代。仲睦まじくとても気持ちの良いご夫婦。戦中戦後の混乱期を生きてこられたご夫婦にとっては、私よりもっとカルピスが高級品であったのではないかと思った。

ご夫婦にとって最高のおもてなしの気持ちを込めてカルピスを出してくれている。原液と思う程の濃いカルピスも、ご夫婦の心がこもっている事に気付く。薄いカルピスではなく濃いカルピスに意味があるのではないかと。

 

グラスを眺める。少しばかり氷が解けたようにも感じる。そう思おうと頭に言い聞かせる。再度、原液カルピスの濃さと甘さにむせないように注意しながらゴクゴクと飲み干した。いえ、美味しく頂きました。

 

後で同僚と話をしていて

「知らなかったのですか?。あのカルピス、原液を原液で割っているらしいですよ!」

そんな事知らないよ~。というか、さすがに原液を原液で割らないよねぇ。黄色いカルピスを白いカルピスで割った?いやいや、それは無いと思いたい。

 

 

※子供の頃のお中元こぼれ話

箱が重い、中身がチャポチャポして液体と続くとカルピスと大きく夢が膨らみ、そんな子供心をバッサリと裏切る中身は醤油の詰め合わせの時だった。残念_| ̄|○。親は喜んでいたけれど…。