バケツをひっくり返したような大雨が降ってきた。
空がピカッと光ると同時に「バリバリ、ドーン!」と、爆音が鳴り響く。
そんな状況の中で私がいる場所は、郊外にある日帰り温泉であり、それも露天風呂である。
日中最高気温が強烈に高い日が続いており、熱中症警戒アラートも連日出されている。そんな日々を過ごしていると、もちろん毎日が暑い。仕事の疲れと、暑さ疲れのダブルパンチでヨレヨレになってしまった自分を癒そうと、何とか重い腰を上げて出かけてきたのに、何故か大雨に襲われることになってしまった。
おばさんの歳まで歳まで生きてくれば、それなりにストレスも多くあり、当然私の自律神経もあまり良くない。疲れがたまると体だけでなく脳みそまで動かなくなるので、何とかして疲れを癒そうとしているのである。
近くに大きな避雷針があるので、雷を引き寄せているのであろうか。ドンドンと雷は落ち放題に落ちてきて、その度に爆音が鳴り響く。そんな中であるが、何となく、露天風呂に浸かりながら、大粒の雨が降り注ぐのをぼーっと眺めていた。
今夜は涼しくなりそうだ。
エアコンの涼しさも快適だが、街全体が冷まされた自然の涼しさにはかなわない。体の緊張感がまるで違うような気がしている。歳を重ねたからだろうか。
そんなことを考えながら、屋根がある露天風呂からの大粒の雨が降る景色を眺めていた。夏の雨は嫌いではない。結構、好きかもしれない。
少しの雨だと、熱がこもった地面に温められてすぐに水蒸気になってしまい、余計にムシムシする最悪の事態になる。しかし、大粒で大量に降り注ぐ熱帯のスコールのような雨は、夏の太陽に照らされて熱々になった街全体を冷やしてくれる。雨が落ち着いた後に吹いてくるひんやりとした風の心地よさには、心がホッとする。
大雨は街全体を洗い流す。街で生きている樹は雨で洗い流されて緑が鮮やかに見える。葉っぱの水滴もキラキラしている。大きな道路も小さな路地も、街の建物も、公園の遊具も、みんなきれいさっぱりするのを見ると気持ちが良い。
豪雨の中であるが、露天風呂に入っている私も濡れている。さすがに屋根がないお風呂だと目も開けていられない程だけれど、雨しぶきで濡れるのも悪くない。屋根の下の温泉に入って外の風を感じるのは気持ち良かった。
吹いてくる風がだんだん涼しくなってくるのが良く解る。
夏の雨は心地よい。
もう少し、ここで雨宿りをしてから帰ろうか。